大阪地方裁判所 昭和45年(ワ)6365号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕三、次に原告の再抗弁一について検討するに、<証拠>によれば、原告は山清商店に対し昭和四五年一〇月一七日到達の書面で、原告と山漬商店間の本件木材販売委託契約を解除する旨の意思表示をなしたことが認められる。
そこで被告の再々抗弁一について判断するに、一般に委任事務の処理が委任者のみならず受任者の利益でもある場合には、特別の事情がない限り、委任者は民法六五一条により一方的に委任契約を解除することができないと解されるのであるけれども、単に委任者が受任者に対し手数料(報酬)を支払うことを約しただけでは、いまだ受任者の利益を目的とした委任契約であるとはいえず、その委任事務の処理が受任者の利益でもあるとは認められないから、被告の再々抗弁一は主張自体失当である。そうすると、原告と山漬商店間の本件木材販売委託契約は、適法に解除されたものといわねばならない。
次に被告の再々抗弁二について判断する。
<証拠>を総合すると、原告は製材業者、山漬商店は木材販売の取次業者(被告の木材市場の売方取引員であつて、製材業者から木材の販売委託を受けて集荷し、被告に更にこれを販売委託する木材問屋)、被告は木材市場における市売業者(木材問屋から木材の販売委託を受けて市場で買方取引員に売却する業者)であるところ、山漬商店は昭和三二年三月二〇日被告との間において、山漬商店が製材業者等から販売委任を受けて集荷した木材を、被告に対して更に被告の木材市における販売を委託し、被告はこれを市日に販売して手数料を取得し、売却代金を所定の期日に山漬商店に対して交付する旨の大阪木材市場売方取引契約と称する販売委託基本契約を締結し、被告の木材市場の売方取引員となつたこと、山漬商店は右基本契約に基づき市の都度被告に対し特定の木材につき販売委託契約を結んで木材の委託販売を繰返してきたこと、原告は昭和四五年一〇月初頃、山漬商店に対して本件木材の販売を委託したのであるが、右委託に際し、本件木材が山漬商店を経由して同年一〇月一五日の被告の記念市に出品されるものであり、従つて山漬商店から更に被告への販売委託がなされるものであることを認識し、且つ右再委託によつて本件木材が被告に引渡されることを許諾していたこと、山漬商店は原告から右販売委託を受けたのち、同月一〇日すぎ頃被告に対し更に再委託したことが認められ、右認定を覆えすべき証拠はない。
右認定の事実によれば、原告は山漬商店が被告に再委託契約をなし本件木材を引渡すことを予じめ許諾していたものであるから、たとえ原告と山漬商店との間の委託契約が解除されても、右再委託契約が有効に存続する限り、被告は再委託契約に基づく占有権原を以て直接原告に対抗できるものといわねばならない、そうすると、被告の再々抗弁二は理由がある(従つて被告の再々抗弁三についての判断は要しない)。 (奥村正策)